UNISON SQUARE GARDEN 20th
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UNISON SQUARE GARDEN 20th

UNISON SQUARE GARDEN 20th Anniversary LIVE

"fun time 歌小屋"
ライブレポート

7月26日 日本武道館
Writer:蜂須賀ちなみ Photographer:Viola Kam (V'z Twinkle)


結成20周年を迎えたUNISON SQUARE GARDENによる日本武道館3DAYS公演。3日目は『fun time 歌小屋』。最終日の7月26日には、クリープハイプとのツーマンライブが開催された。

UNISON SQUARE GARDENとクリープハイプの出会いは、インディーズ時代まで遡る。同じ時代に下北沢近辺のライブハウスで活動していた2組の交流は2006年ごろにスタート。吉祥寺Planet Kでクリープハイプのライブを観て衝撃を受けた田淵が、会場でCDを購入しようとしたところ、物販に立っていた尾崎世界観から互いのCDを交換しようと提案されたという。尾崎もユニゾンのことを知っていて、ちょうどCDを買いたいと思っていたそうだ。ここで田淵が『新世界ノート』を、尾崎が『ねがいり』を差し出し、今日に至る交流が始まった。

2007年にはユニゾンの自主企画『箱庭フェスティバル』にクリープハイプが出演し、2011年にはクリープハイプの自主企画『ストリップ歌小屋』にユニゾンが出演した。また、2017年にはお互いの自主企画に呼び合い、2日連続でツーマンを行っている。

ユニゾンが2019年に開催した『Thank you, ROCK BANDS! 〜UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Live〜』には尾崎が単独で出演したものの、バンド同士のツーマンは7年ぶりとなった。お互いが「今だ」と思えるタイミングでしか競演してこなかった2組の関係性は、「仲良しこよし」や「一緒にシーンを作っていこう」といった性質のものではない。競演が頻繁ではない中でも、互いの作品や活動は常にチェックしあっていて、リスペクトから、時に「悔しいから近づけない」「今近づいたら、自分たちのバランスが変化してしまう」と思う時期もあったそうだ。この繊細な関係性こそが、お互いが重要な存在だった証左だろう。誠実にバンド活動を続けていれば、いつかまた道が交わる――という信頼が、自身の活動の一つの励みになっていたはずだ。

そんな2組が下北沢を飛び出して武道館でツーマンを開催するなんて、ロックバンドには夢がある。武道館正面入口の横断幕は前2日とは違うデザインで、この日だけライブハウスの黒板風になっていた。

開演時刻になると、クリープハイプのメンバーが無音の中で登場した。楽曲よりも先に届けられたのは尾崎の言葉。「クリープハイプも長く活動してきて、そんなに周りのバンドのことを気にしていないんだけど、ユニゾンはすごく大事なバンドです。20周年、本当におめでとうございます。大事な日にステージに立たせてもらえて本当に嬉しく思っているし、その期待に応えたいと思います」というMCからは、ユニゾンメンバーのみならず、ユニゾンファンへの敬意が伝わってきた。演奏は「ナイトオンザプラネット」でスタート。尾崎のアカペラによる歌い出しで、場の空気を一瞬で変えるとともに、エレクトリックピアノを基調とした浮遊感のあるサウンド、独特な跳ねを維持したバンドのグルーヴで観客を魅了した。

その後は、長谷川カオナシが初めてユニゾンのライブを観た時の感想を語ったMCを挟みつつ、「チロルとポルノ」「ボーイズENDガールズ」を披露。「社会の窓」ではラストの歌詞を「ユニゾン、愛してる」と変えてメッセージを送り、「イト」では華やかな響きで場内を満たした。クリープハイプは尾崎の歌と言葉という圧倒的な武器を有しながらも、近年ではギターロック的なアプローチに留まらず、ソウルミュージックやヒップホップなどのエッセンスを取り入れている。そうして自身の表現を追求する果敢なミュージシャンシップ、変化しながら新たなファンを続々と獲得するバンドの凄みがライブにも表れていた。

セットリストの終盤に差し掛かると、尾崎が「今から18年か19年前……」と田淵とのCD交換を振り返る。尾崎が語ったのは、悔しさからユニゾンのCDを買いに行けず、ネットで試聴していたこと。そんななか、ある日田淵から「ライブすごくよかった」と声を掛けられたこと。当時バンドは上手くいってなかったが、声を掛けてもらえたのが嬉しくて「もうちょっとやろうかな」と思えたこと。当時の心境を素直に明かしながら、「それからずっと、長い間お互いバンドを続けていって、こうして一緒にやれることが嬉しいです。ありがとうございます」と現在の喜びを語った。

そんなMCのあとに演奏されたのは、尾崎が差し出したCDの表題曲「ねがいり」。そこに小川幸慈の搔きむしるようなギターカッティング、小泉拓の叩く変則的なリズムが続き、ユニゾンの楽曲「さよなら第九惑星」のカバーへと繋げた。2019年にリリースされたユニゾンのトリビュートアルバム『Thank you, ROCK BANDS! 〜UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album〜』にも収録されたクリープハイプによるカバーは、「シュガーソングとビターステップ」のフレーズを取り入れたアレンジが特徴的だ。また、ドラムを筆頭に、バンドのプレイはかなり激しい。4人の鳴らす音がかち合い、火花を散らす様子はスリリングかつ煽情的で、対バン相手であるユニゾンの闘争心を掻き立てているようにさえ感じた。

最後のMCでは尾崎が「頻繁に連絡をとるわけでもないし、何回も対バンしているわけじゃないけど、いてくれるだけですごく安心するし、どんな活動をしているのかずっと気にしています。ただいい加減、フェスでトリをやってほしいですね。田淵くんに会うと、『すみませんね、トリ任せちゃって』と言われるけど(笑)」と胸中を明かした。そしてラストナンバー「栞」を披露。4人は揃って礼をしてからステージを去った。

ステージ転換を挟み、UNISON SQUARE GARDENのライブがスタート。初日同様、ロングバージョンのSE「絵の具」が流れるなか、青の照明に包まれたステージに3人がやってきた。

鈴木の鳴らすシンバルのブライトな響きから始まった1曲目は、『新世界ノート』のオープニングナンバー「アナザーワールド」。アマチュア~インディーズ時代からのレパートリーを武道館で鳴らすという熱い場面で、音響もライブハウス的に仕上げられていた。「下北沢から武道館へ」という物語を感じさせるとともに、前日のオーケストラ公演との違いも際立つ、細やかな演出だ。逆光を背負う3人は演奏にグッと入り込んでいて、ギターもベースもドラムも素晴らしい鳴りよう。きっと直前のクリープハイプのライブに感化されたのだろう。

鈴木の連打によって「アナザーワールド」の最後の音の余韻は途切れることなく続き、風穴を開けるようなフィルインから「センチメンタルピリオド」が始まった。「20年の歴史ここに結実」的な美しさのあった初日のエンディングとはまた違う、エネルギー漲る「センチメンタルピリオド」。やはりクリープハイプから大いに刺激を受けたのだろう。それが一音一音から伝わってくる。はやる気持ちを認め、これぞ対バンの醍醐味と楽しみながら、メンバー同士の心のチューニングを合わせるように、コンタクトを交わしながら鳴らす3人の姿が印象的だった。

続いては、先ほどクリープハイプも披露した「さよなら第九惑星」。斎藤による冒頭のギターリフがかつてなく情熱的だ。そこに、斎藤と同じく高いテンションを保った鈴木が、複雑なリズムを叩きながら合流。さらに田淵による跳躍感のあるベースラインが加わることで、バンドのグルーヴが一層深くなる。衝撃に立ち尽くす人の足場を削り取ってしまいそうな音の奔流。切れ味抜群のサウンド。ステージを支配するヒリヒリとした空気がたまらない。演奏が終わると、観客が「フゥ―!」と声を上げ、3人に賞賛を送った。

ここで斎藤が「どうも、下北沢から来ました。UNISON SQUARE GARDENです」と挨拶。冒頭3曲の流れに「もしかして」と思っていた観客も多かったろうが、「田淵が交換したCD『新世界ノート』から3曲連発でお見舞いしてやりました」と選曲意図が改めて説明された。そして斎藤は、自主企画にクリープハイプを呼んだ2007年のことを振り返る。「その頃からクリープハイプはめちゃくちゃカッコよかった。同郷とも言える大好きなバンドが、ずっとカッコいいまま居続けてくれることは、UNISON SQUARE GARDENにとってどれだけ大きなことか。今日、噛み締めています」と語るとともに、「クリープハイプも今のメンバーになって今年で15周年です。UNISON SQUARE GARDENとクリープハイプ、思いっきりお祝いしてください。よろしくお願いします!」と伝え、演奏を再開させた。

セットリストは『新世界ノート』から一旦外れ、4曲目には「23:25」が披露された。斎藤の鳴らすリズミカルなギターリフに、同形のリズムによるドラムフレーズ、ベースフレーズが順に重なり発展。バンドのアンサンブルが躍動する。そのサウンドを受けて、観客の身体も軽くなり、その場で飛び跳ねる人が続出した。音楽が鳴れば、人は束の間空を飛べる。リフを弾きながら顔を上げ、笑顔を覗かせた斎藤は、ギターソロ披露後には楽器を掲げながら揺らし、余韻を会場いっぱいに響かせた。〈七色のステージに変えて〉という歌詞の通り、ステージが七色に染まるユニゾンらしい照明演出も演奏に花を添えている。

ドラムフィルがすぐに入ってきて、次の曲「kid,I like quartet」へ。さらにベース&ドラムが曲間を繋ぎ、弱拍を強調した特徴的なギターリフから「MR. アンディ」へ。「MR. アンディ」では、3人が〈君が残像に〉という最初のフレーズを歌い終えた直後、星空を思わせる照明が広がる演出が。美しい光景のなか、ボーカル&コーラスのハーモニーや「パパン」というリズムの手拍子が場内に響いた。このように、メンバー自身がいきいきとサウンドを鳴らし、今この瞬間の感情を音楽として発露させることで、聴く人の多様な態度を、語らずとも肯定する時間が続く。今回のアニバーサリーライブのような特別な機会を除き、UNISON SQUARE GARDENはライブで多くを語らない。武道館の客席を満たしていたのは、そんなバンドの在り方にある種一方的に助けられてきた人たちであり、この日も、音楽を介した純度高いコミュニケーションが生まれていた。3日間続いた武道館ライブも最終日を迎え、斎藤も田淵も鈴木も、いつもより客席をよく見ていたように思う。語らずとも伝わる、演奏で応える――自分たちの音楽に対する誇りとリスナーに対する信頼から生まれる、UNISON SQUARE GARDENらしい交流が、武道館の広い空間を温かく満たしていた。

7曲目は「to the CIDER ROAD」。フェードインするSEに、この曲の登場を感じ取った観客が歓声を上げるなか、みずみずしいバンドサウンドが放たれた。〈CIDER ROAD もう迷わないで 早々に出かけよう〉という歌詞がストレートな印象を残す「to the CIDER ROAD」は、4thアルバム『CIDER ROAD』に収録されている。同作は、田淵が作曲の悩みから抜けた時期に制作された歓喜に満ち溢れたアルバムで、尾崎もこのアルバムを聴いて「すごくいいね」と田淵に連絡したというエピソードがある。一方、田淵も、クリープハイプが同年にリリースした作品をチェックしながら、自分にはないものを感じ、尊敬の眼差しを向けていたそうだ。

互いを鏡として研鑽を重ねてきたユニゾンとクリープハイプは、今やシーンにおいても重要な存在となった。「to the CIDER ROAD」演奏後のMCでは、斎藤が、先ほどの尾崎の「フェスのトリをやってほしい」という発言に対し、「田淵のTシャツを見て? 『NEVER BELIEVE ROCK FESTIVAL』って書いてある。思想が出ちゃってんのよ(笑)」と返答。さらに「大好きな仲間と、僕がめちゃくちゃ自信を持っているUNISON SQUARE GARDENと、並んで武道館に立てて嬉しく思います」と喜びの言葉を重ねた。

先のMCでも言及された通り、クリープハイプは現メンバー15周年。このライブの約1ヶ月後には、初のトリビュートアルバム『もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって』がリリースされた。ライブ当日時点では、ユニゾンの同作参加は明らかになっていたものの、何の曲をカバーしたかは明かされていない状態。斎藤がいたずらっぽく「やる~?」と言うと、どこよりも早いライブでの初解禁にオーディエンスが喜びの声を上げた。斎藤いわく、これから披露するクリープハイプのカバーは、3日間のセットリストの中で最も練習した楽曲とのこと。前2日間では、特別な日にしか演奏されない曲やオーケストラとの共演曲も披露されたが、それよりも練習したとは……。観客の期待がぐんぐんと高まる中、斎藤の「特に田淵は練習したんじゃないの?」という投げかけに、田淵も頷いて同意する。

そして「見せてやろうぜ。練習の成果!」と演奏がスタート。楽曲の口火を切ったのは、ユニゾンリスナーの身体に馴染んでいるあのフィルインとギターリフ……「えっ? これは『シュガーソングとビターステップ』では?」と思いきや、3人の紡ぐフレーズは途中からクリープハイプ「イト」のイントロへと変化した。大胆なマッシュアップだが、このアレンジにはしっかりとした背景がある。そもそも、クリープハイプ随一のポップナンバー「イト」の誕生には、「シュガーソングとビターステップ」の存在が影響しているのだ。ユニゾンメンバーがそのことを知ったのはリリースから少し経ってから。田淵は何も知らずにいい曲だなと感じて、尾崎に連絡していたそうだ。クリープハイプからのトリビュート参加オファーには「『イト』のカバーをお願いします」という曲名の指定も含まれていたらしく、ユニゾンは楽曲同士のストーリーを踏まえて、曲中に「シュガーソングとビターステップ」の要素を散りばめることに。この曲で行われていたのはバンド同士の返歌の贈り合いであり、武道館ツーマンで初披露という展開も熱い。そしてなんと、2番Aメロのメロディは田淵によって歌われた。田淵がユニゾンの楽曲でメインボーカルをとることはなく、これは非常に珍しい場面。観客は予想外の展開に驚きながら、直前のMCの意味を理解したことだろう。

斎藤が「クリープハイプ『イト』でした。じゃあ次は、『新世界ノート』からもう1曲」と短く伝えて始まった「箱庭ロック・ショー」からは、ラストまでノンストップ。『新世界ノート』の音源よりも速いテンポで軽快に演奏された同曲は、細かいリズムの縦を揃える3人の手腕、長年一緒にいるからこそ共有されている感覚、バンドの積年の鍛錬を感じさせた。“継続”の美しさが体現されている。続いて、斎藤が「オンドラムス・タカオスズキ!」と告げ、ドラムソロへ。鈴木は、様々なリズムパターンを組み込んだフレージングに情熱を込め、絶叫とともに約3分間のソロを締め括った。演奏終了後にはドラムセットから離れ、ジャケット背面の20thロゴを観客にアピール。客席から大きな歓声が上がった。

鈴木は胸に灯った炎を絶やさずに、「スリー、フォー、ファイブシックスセブンエイト!」と次の曲のカウントをシャウト。そうして始まった「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」では、斎藤、田淵もステージ中央に出てきて楽器を掻き鳴らすなど、熱量の高いプレイを見せた。3人が神経を研ぎ澄ましながら、同時に感情をぶつけるようにして臨む間奏は特に凄まじい。鳴っている音は激しく、さながら暴れ馬だが、彼らは、彼らにしか分からない理屈と呼吸で、この楽曲を見事に支配している。

そして鈴木渾身のフィルインから、「シュガーソングとビターステップ」へ。アニメの主題歌としても愛され、バンドの代表曲として育ったこの曲では、ユニゾン流の人生論が歌われている。〈ママレード&シュガーソング、ピーナッツ&ビターステップ/生きてく理由をそこに映し出せ/北北東は後方へ その距離が誇らしい/世界中を、驚かせ続けよう。〉――斎藤の歌う数々のフレーズが観客の心を射貫き、田淵の奏でるベースラインが冒険譚の軌跡を描くなか、鈴木のエネルギッシュなプレイも相まって、武道館3DAYSのクライマックスにふさわしい祝祭感が生まれた。

「UNISON SQUARE GARDEN 20周年、最高でした。どうもありがとう。ラスト!」。アニバーサリーの特別感と普段通りの簡潔さが同居した斎藤らしい言葉が、武道館3DAYSの終幕を報せる。ライブを締めくくる役割を任せられた楽曲は「フルカラープログラム」。鈴木による冒頭のドラムフレーズを経て、3人で奏でるイントロに入ると、20年の泥臭い歩みから生まれたキラキラのサウンド、虹色の光がステージから放たれた。彼らはこの曲で〈どうせなら、この際なら 虹を作ってみよう/そしたら誰も文句なんかつけらんないから〉と歌っているが、その言葉通り、酸いも甘いも噛み分けながら、腐らずに、全ての感情をカラフルな音楽に昇華させた20年間だった。そして今、武道館には収まりきらないほど多くのリスナーが、バンドがここまで続いたことを3人と一緒に喜び、祝っている。なんて美しい光景だろう。ラスサビでは楽器の音が止み、斎藤がアカペラで歌を届けた。斎藤が〈涙キラキラ西の空に光る/モノクロでは説明できない〉までを心を込めて歌い終えると、〈完全無欠のロックンロールを〉というフレーズをきっかけに、バンドのサウンドが炸裂する。同時に会場全体が明るくなり、オーディエンス一人ひとりの輝かしい表情が明らかになる。別々の人生を歩みながら、同じ音楽に光を見出すロックバンドとリスナーの関係性を象徴する場面とともに、ライブ本編が終了。田淵、鈴木に続いて最後にステージを去った斎藤が、捌けようとした寸前で来た道を少し戻り、ステージが見えづらい注釈付指定席の人たちに手を振っていたのが印象的だった。

『fun time 歌小屋』は、互いに認め合うUNISON SQUARE GARDENとクリープハイプが最高のライブで応え合う、純然たるツーマンとなった。バンドは好きで始めるものだが、バンド活動は楽しいだけでなく、簡単に続けられるものではない。きっと彼らのバンド人生の中にも、同志の背中を見送る瞬間が数えきれないほどあったはずだ。そんななか、この日2組は、継続の先に待っていた再会の幸福を噛みしめながら、相手の実力に武者震いし、自分たちの音楽に尽くし、現在進行形の化学反応に燃えた。現時点で最高の仕上がりでありながらも、バンドがまだまだ変化する可能性を示すライブで、ユニゾンの武道館3DAYSの締めくくりとしても、素敵なエンディングとなった。

改めて、本当に素晴らしい3日間だった。この感動をメンバーに伝えたいという想いからか、観客による拍手は鳴り止まず、3人がアンコールに応えようとステージに戻ってきた。ライブレポート用に事前にもらっていたセットリストにアンコールの記載はなかったから、3人は、観客の気持ちを受け取ってもう1曲やろうとその場で決めたのだろう。3日間で57曲を見事に歌い上げた斎藤は「さすがに疲れたよ(笑)」と笑いながら、観客に「ちょっと今から大人の会議するから」と伝え、田淵と鈴木に「何やる?」と尋ねる。そのまま3人はステージ上で話し合いを始めた。ユニゾンのライブでは珍しい光景。面白い案が上がったのか、鈴木が首を傾げたり、斎藤が「あははは!」と笑い声を上げたりしている。

3人が選んだのは「シャンデリア・ワルツ」だった。シングル表題曲でもアルバムリード曲でもないが、バンドが大切に紡ぎ続け、その想いを受け取ったファンからも深く愛されている「シャンデリア・ワルツ」。曲の導入となるセッションでF#のコードが響くと、観客も早々にこの曲だと理解し、喜びの空気が広がった。振り返れば今回の武道館3DAYS、ロックバンドとそのファンの間でしか共有されない文脈=〈わからずやには 見えない魔法〉がそこかしこに張り巡らされており、音楽が、音楽を愛する人の人生にもたらす潤いや輝きをこれ以上ないほどに体現されていた。歴史に残る、最高のアニバーサリーライブだった。

全てを出しきるように演奏に向かう3人は心からの笑顔。目を合わせて最後の一音を鳴らし終えると、「UNISON SQUARE GARDENでした、バイバイ!」という爽快な挨拶とともに武道館をあとにした。