


UNISON SQUARE GARDEN 20th Anniversary LIVE FINALE
"fun time tribute"
ライブレポート
12月25日 インテックス大阪
Writer:蜂須賀ちなみ Photographer:Viola Kam (V'z Twinkle) / 河上良
いよいよフィナーレを迎えたUNISON SQUARE GARDENの20周年プロジェクト、もとい“プログラム20th”。日頃世話になっているイベンターからの提案を募り、各地で対バンを繰り広げた『○○が極まる』シリーズ、そして全国ツアー『20th BEST MACHINE』を経て、12月25日には、大阪・インテックス大阪5号館でトリビュートライブ『UNISON SQUARE GARDEN 20th Anniversary LIVE FINALE "fun time tribute" supported by FM802 35th"Be FUNKY!!"』が開催された。
アニバーサリーの締め括りとなるこのライブには、ユニゾンが信頼を寄せるgo!go!vanillas、SHISHAMO、フレデリック、光村龍哉(ZION/NICO Touches the Walls)が出演し、ユニゾンの楽曲をカバー。各バンドのライブの合間にはFM802のDJ・落合健太郎の進行によるトークパートも設けられ、ユニゾンメンバーとゲストアーティストが和やかに語り合った。2019年に開催されたトリビュートライブ『Thank you, ROCK BANDS! 〜UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Live〜』と、2020年に開催された生配信ライブ『fun time HOLIDAY ONLINE』を掛け合わせたような、前代未聞の試みである。
約4時間半にわたったライブは、主催者であるユニゾンのステージから始まった。巨大ビジョンに斎藤、田淵、鈴木の姿が映り、場内にどよめきが広がるなか、斎藤がギターを弾きながら〈何気ない歌で 何気ない記念日をお祝いしたら〉と歌い始める。1曲目は「プログラムcontinued (15th style)」。「“プログラム20th”フィナーレへようこそ。UNISON SQUARE GARDENです!」という斎藤の挨拶をきっかけに、3人はカラフルなサウンドを響かせた。15周年を記念して制作された楽曲だけに、今年聴けるとは思っていなかったファンも多かっただろう。さらに楽曲の歌詞は〈耳を塞いだあの日から8000日ちょっとくらい歩いてて〉と20周年仕様に変えられている。〈優しくなくても 正しくなくても 今日ぐらいは祝ってくれないかな〉という歌詞に「もちろん」と答えるかのようにフロアから歓声が上がるなか、田淵と鈴木は笑顔で楽器を鳴らし、斎藤の澄んだ歌声はどこまでも伸びていった。
最初のMCでは、斎藤が今回のライブの趣旨を説明。「ユニゾンメンバーとユニゾンファンの前で、様々なアーティストが、ユニゾンの楽曲をカバーする」というこのライブのヤバさは当人が一番分かっているようで、斎藤は「『曲やってよ』って軽いノリでお願いしたけど、ユニゾンの曲は普通の曲4曲分くらいの情報量が詰まっているので……快諾してくれたけど、内心ブチ切れてると思います(笑)」と笑いながら、そういったハードルを乗り越えて快諾してくれたゲストアーティストの人間力、素晴らしいカバーを実現させる腕前に対してリスペクトを示した。そして観客には「すごく幸せな日になるだろうなと思ってますので、どうかみなさんも最初から最後まで無理せず楽しんでもらえたらと思います」と伝えた。
続いて披露されたのは、「傍若のカリスマ」。まさに「4曲分くらいの情報が詰まっている」楽曲だ。改めて生で聴くと、「よくもこんな曲を作ったものだな」という感心を抱くとともに、敬服や畏怖を飛び越えて大笑いしてしまうレベルである。演奏を終えると、落合が「お届けしたのはUNISON SQUARE GARDEN『傍若のカリスマ』でした!」とラジオ風にアナウンスし、メンバーはステージの隣に設けられたブースへ移動。トークパートへと移った。ユニゾンメンバーはノンアルコールビールを片手に、鈴木の号令の下、観客とともに乾杯。3人は「ロックバンドを20年頑張ったことに対して、仲間から労いの言葉をかけられたい」といった想いを語りながら、今日は自分たちも観客とともに、ゲストアーティストのライブを楽しむのだとリラックスして話していた。また、トークパートでは、「傍若のカリスマ」を早々に披露した理由について、「このあとグダグダになっていくだろうから、演奏の難しい曲は先にやろうと思って(笑)」と明かされる場面も。ゲストアーティストのライブを控えたステージでサウンドチェックが進むなか、3人はBGMにノりながら小躍りしていて、ファンが微笑ましくそれを見ている。普段のライブではなかなか生まれ得ない光景だ。
ゲストアーティスト1組目はSHISHAMO。『金沢が極まる』では「ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ」のカバーで観客を驚かせたSHISHAMOだが、この日はいったい何の曲をカバーするのか。そんな期待に応えるようにSHISHAMOは1曲目に「恋する惑星」を、2曲目に2017年の『fun time HOLIDAY 6』でもカバーした「ワールドワイド・スーパーガール」を披露。自身のカラーを巧みに織り交ぜたハーモニーと疾走感溢れるサウンドで観客の心を瞬く間に掴んだ。
SHISHAMOによるユニゾンカバー2連発によって、場内のテンションは一気に引き上げられた。ストイックな演奏に対して、MCでは宮崎朝子が「本日はトリビュートライブということで……とんでもないことだよ! ユニゾンみたいなバンドが一番しちゃいけないこと!(笑)」と笑い、吉川美冴貴が「震えが止まらないよ!」と同調。松岡彩も「知らない人の体みたいになってる」と慣れないフレージングに対する感想を述べる。そんなやりとりのあと、宮崎はユニゾンを「3ピースってやっぱりカッコいいなと思わせてくれるバンド」と評し、「憧れと尊敬の気持ちでいっぱいです。そんなバンドの20周年をこんなステージでお祝いできるのも嬉しいです」と語ったのだった。そしてライブの後半は自身の楽曲で畳みかける。ユニゾンメンバーも「いやー……すっごい!」と唸るほど、痺れるようなライブだった。
なお、SHISHAMOのライブ終了後には、ステージ後方のビジョンにカバーされた楽曲のタイトルが表示される仕掛けも用意されていた。この演出は以降も続き、ビジョンに楽曲タイトルがどんどん追加されていく仕組み。そんな視覚的な工夫もありつつ、続いて、フレデリックが登場した。彼らは代表曲「オドループ」からスタート。アウトロで加速するなどのライブアレンジや、赤頭隆児がトークブースに腰を下ろしてソロを奏でるなど自由な振る舞いもありつつ、観客をしっかり盛り上げてから、「次の曲は、俺たちがユニゾンを大好きな理由がめちゃくちゃ詰まっている曲です」と「マイノリティ・リポート(darling, I love you)」のカバーを披露した。少数派の切り捨てや“なかったことにする”態度に首を傾げるスタンスを歌ったこの曲は、人それぞれの個性や歪さを大切にするフレデリックのマインドとも確かに通ずるものがある。コアな選曲と重低音の効いたアンサンブルに、観客は喜んで反応していた。
さらに、鈴木へのリスペクトが滲む高橋武の気合いの入ったカウントから始まった「世界はファンシー」は、三原健司が〈インテックスなどマジチョロい ユニゾンのカバーとかマジチョロい〉と歌詞を変えて歌い、〈My fantastic guitar〉ならぬ〈My fantastic bass〉と紹介された三原康司のソロから、高橋と赤頭のソロにも繋ぐなど、大胆なアレンジが施された。直後のトークパートでは、健司がユニゾンメンバーに「数々のご無礼を……チョロいわけがない」と謝罪するも、鈴木が「だってチョロいんでしょ?」と切り返し、笑いが生まれる場面もあった。
光村龍哉は、アコースティックギターを携えて一人でステージに現れた。光村がボーカル&ギターを務め、2019年に活動終了したNICO Touches the Wallsは、2004年の『TEENS' MUSIC FESTIVAL』関東甲信越大会でユニゾンと同じステージを踏んでいる。ユニゾンと最も付き合いの長いバンドマンである彼が最初に披露したのは、「センチメンタルピリオド」のカバー。ジョン・レノン&オノ・ヨーコ「Happy Xmas (War Is Over) 」とのマッシュアップアレンジで観客をハッとさせた。2曲目は、NICOが2006年に発表した楽曲「image training」。現在ZIONで活動する光村が、この曲を公の場で歌うのはかなり久しぶりだ。ユニゾンと光村の関係性があってこそ実現したことだろう。
ラスト1曲を残して斎藤がステージに呼び込まれた。斎藤は光村とのコラボに臨む理由を「みなさん、拳を握りながらUNISON SQUARE GARDENの曲をカバーしてくれたんだと思うんだけど、それを僕自身ちょっとでも味わいたくて」と表現。そして光村とエド・シーラン「Shape of you」をカバーした。見事なコンビネーションで複雑なメロディを歌い上げた2人は、演奏終了後、ステージ上で固い握手を交わす。その後のトークコーナーでは“同期”同士で思い出話に花を咲かせた。
最後のゲストアーティストのgo!go!vanillasは、「シュガーソングとビターステップ」のカバーを披露。自身の楽曲「エマ」のリフを取り入れたユニークなアレンジで観客を踊らせた。斎藤が好きな楽曲「倫敦」を盛り込んだセットリストで臨んだ彼らは、メンバー全員で「おめでとうございまーす!」と声を合わせてユニゾン20周年を祝福。牧達弥がMCで「呼んでもらってすごく嬉しかったんですが、(ユニゾンから)『僕たちの曲をやってください』と頼まれた時、『本当に出られるんだろうか?』『僕たちにそんな技量があるんだろうか?』と思って……」とプレッシャーを感じていたことを明かすと、観客からは理解を示す温かい笑いが起こった。
長谷川プリティ敬祐が一緒に体を動かそうと促し、柳沢進太郎がコール&レスポンスを煽るなど、ユニゾンのライブでは見ないシーンも多かったバニラズのライブ。ラストには、ジェットセイヤによる声を枯らしながらの全力のカウントから「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」のカバーが披露された。メンバー4人のプレイに、サポートキーボーディスト井上惇志によるアディショナルアレンジが掛け合わさり、楽曲の新たな表情が引き出されている。ライブ終了後のトークパートでは、斎藤がバニラズの魅力について「何やってもgo!go!vanillasになる。メンバーそれぞれが出す音に“自分自身”が滲みまくっていて、その人間力が音楽に宿っている」と熱弁した。
牧とのトークを終えた斎藤、田淵、鈴木は、ステージ後方のビジョンにズラッと並んだ、ゲストアーティストがカバーした7曲のタイトルをしみじみと眺めている。このあと3人は、20周年を締めくくるライブを行う。斎藤が「こんなに準備してないライブは初めて」と呟き、鈴木が「ルーティン崩れまくってる(笑)」と笑うなか、落合が「お三方、準備はよろしいですか?」と尋ねると、代表して斎藤が「大丈夫ではないです(笑)」と返答。そして彼らは「大丈夫ではないかもしれないですけど、いきましょう! Final artist is UNISON SQUARE GARDEN!」という落合の滑らかなアナウンスに背中を押されながら、SE「絵の具」をバックにステージへ向かった。鈴木がコートを脱ぐと、彼がこの1年ライブで着続けていた、背面に20thロゴが入ったジャケットが現れる。粋な演出に観客が歓声を上げるなか、田淵は笑顔で定位置につき、斎藤はいつも通り片手を上げて、ライブの始まりを合図した。
ステージを包む静謐な空気、「本家!」と告げた斎藤の鋭い発声から、3人は既にライブモードに切り替わっているのだと伝わってくる。そして背後のビジョンに表示されていた7曲のタイトルは、「恋する惑星」のみに切り替わった。そう、彼らが1曲目に選んだのは、数時間前にSHISHAMOも披露した「恋する惑星」。明るくオープンな楽曲をエネルギッシュに届け、仲間と一緒に20周年のゴールテープを切るこのライブの幸福感を体現した。続いては「ワールドワイド・スーパーガール」。SHISHAMOによってカバーされた楽曲の演奏が続く。こちらもみずみずしいサウンドだ。
さらに、先ほどバニラズによってカバーされた「シュガーソングとビターステップ」、フレデリックによってカバーされた「マイノリティ・リポート(darling, I love you)」が連続で披露される。おそらくこの頃にはみんな気づいていたはず。このライブ、「様々なアーティストがユニゾンの楽曲をカバーする」だけではなく、「ユニゾンが直後に本家を披露する」とんでもないライブなのだと。いわば、『Thank you, ROCK BANDS! 〜UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album〜』のトリビュート盤(Disc1)と聴き比べ盤(Disc2)がリアルタイムで展開されている感じだ。
自分たちが慕い敬愛するアーティストによる本気のカバーを受けて、ユニゾンは同志への感謝、温かい気持ちを胸に抱きながらも、自分たちも負けていられないのだと意欲に燃えている。とめどなく溢れ出るエネルギーを抑える必要などないと言わんばかりに、全て楽曲に注ぎ込んでいる。“ライブ化け”という1単語ではとても言い表せないほど、楽曲が、バンドが、大胆に化けていく瞬間の連鎖。そんななか、「世界はファンシー」ではフレデリック健司のアレンジを受けて、斎藤が〈20周年とかマジチョロい〉と歌詞を変えて歌った。そして間奏では〈My fantastic guitar!〉=ギターソロも炸裂。その場で立ち上がりながらドラムを叩きまくる鈴木も、駆け回ったり床に倒れ込んだりしながらもフレーズを絶やさない田淵も全身全霊だ。
「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」を経て、7曲目に披露されたのは、メジャーデビュー曲「センチメンタルピリオド」だ。七色に輝く楽曲タイトルを背負いながら、溌剌としたサウンドを響かせた3人は清々しい笑顔。目の前で繰り広げられる演奏に高揚していた観客は、楽曲が終わると、充実した表情を浮かべる3人へ拍手喝采を送った。ここでMC。斎藤がゲストアーティストやMCの落合のことを「仲間」と語りながら、「それは出てくれたみなさんだけじゃなくて、貴重な時間を割いて来てくださったみなさんや、配信で観てくださっているみなさんもそう」と付け加え、「この20年、めちゃめちゃ楽しかったです。本当に、観に来てくれてありがとう」と感謝を伝えた。
7曲全部終わったけど、次は何を演奏するつもりなのだろう。多くの観客の頭にそんな考えがよぎっていた時、斎藤は「2024年の活動はUNISON SQUARE GARDENの糧になりました。いつか永遠の眠りにつくころに、思い出すシーンがたくさんあったなと思います」と言葉を連ね、20周年の活動の余韻を深く噛み締めていた。そしてMCは「よかったら、これからもUNISON SQUARE GARDENを見てやってください」と締めくくられ、バンドとリスナーを繋ぐ「さわれない歌」へ。〈僕が今日も旅に出る理由は/多分君には教えないけれど〉と始まるこの曲では、音楽を信じているからこそリスナーに寄り添わないユニゾンの生き方が歌われているが、2024年は、20周年を合言葉に、互いの気持ちを重ね合わせた例外的な1年だった。斎藤がこれからについて話したMCに続けてこの曲が届けられることで、特別な1年が終わり、バンドが通常営業に戻ることが示唆される。祭りの終わりにはほのかな寂しさが漂うが、ユニゾンと私たちリスナーの付き合いはこれからも続いていくはずだ。
「さわれない歌」と同様、「シャンデリア・ワルツ」もバンドとリスナーにとって特別な意味を持つ曲であり、大切な曲を連続で演奏する20周年のエンディングにふさわしい展開が、ユニゾンを愛する一人ひとりの胸を強く打つ。そして「20周年、本当にありがとうございました。ラスト!」と、ラストナンバー「フルカラープログラム」が披露された。虹色の光の下で響く豊かなサウンドは20周年の集大成そのものだが、汗を光らせながら演奏するメンバーは、今この瞬間にもK点を越えようとしている。斎藤がスタンドマイクを反らし、アカペラで届けたラスサビを経て解き放たれる〈完全無欠のロックンロール〉。彼らが最後に歌ったのは〈どうか忘れないでよ〉というフレーズだったが、今年ほど年忘れをしたくない年はない。きっと全部忘れないぞと誰しもが思っていたはずだ。
振り返れば、UNISON SQUARE GARDENの20周年は、『UNICITY Vol.2』での斎藤の「20周年始まります!」という高らかな宣言から始まった。そして今、「UNISON SQUARE GARDENでした、バイバイ!」といういつものシンプルな挨拶で締めくくられようとしている。2024年が終われば、UNISON SQUARE GARDENは通常営業に戻り、私たちの生活も変わらず続く。それぞれの悩みや苦労が尽きることはないだろう。それでもこの1年で彼らが鳴らした音楽、物語の結実というべき美しいライブは、私たちが世界を諦めずにいられる理由になり得るものだ。
ロックバンドの生き様を、人生のロマンを、UNISON SQUARE GARDENは20年かけて私たちに見せてくれた。これからも3人の信じる音楽をもっと聴かせてほしい。
アニバーサリーの締め括りとなるこのライブには、ユニゾンが信頼を寄せるgo!go!vanillas、SHISHAMO、フレデリック、光村龍哉(ZION/NICO Touches the Walls)が出演し、ユニゾンの楽曲をカバー。各バンドのライブの合間にはFM802のDJ・落合健太郎の進行によるトークパートも設けられ、ユニゾンメンバーとゲストアーティストが和やかに語り合った。2019年に開催されたトリビュートライブ『Thank you, ROCK BANDS! 〜UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Live〜』と、2020年に開催された生配信ライブ『fun time HOLIDAY ONLINE』を掛け合わせたような、前代未聞の試みである。
約4時間半にわたったライブは、主催者であるユニゾンのステージから始まった。巨大ビジョンに斎藤、田淵、鈴木の姿が映り、場内にどよめきが広がるなか、斎藤がギターを弾きながら〈何気ない歌で 何気ない記念日をお祝いしたら〉と歌い始める。1曲目は「プログラムcontinued (15th style)」。「“プログラム20th”フィナーレへようこそ。UNISON SQUARE GARDENです!」という斎藤の挨拶をきっかけに、3人はカラフルなサウンドを響かせた。15周年を記念して制作された楽曲だけに、今年聴けるとは思っていなかったファンも多かっただろう。さらに楽曲の歌詞は〈耳を塞いだあの日から8000日ちょっとくらい歩いてて〉と20周年仕様に変えられている。〈優しくなくても 正しくなくても 今日ぐらいは祝ってくれないかな〉という歌詞に「もちろん」と答えるかのようにフロアから歓声が上がるなか、田淵と鈴木は笑顔で楽器を鳴らし、斎藤の澄んだ歌声はどこまでも伸びていった。

続いて披露されたのは、「傍若のカリスマ」。まさに「4曲分くらいの情報が詰まっている」楽曲だ。改めて生で聴くと、「よくもこんな曲を作ったものだな」という感心を抱くとともに、敬服や畏怖を飛び越えて大笑いしてしまうレベルである。演奏を終えると、落合が「お届けしたのはUNISON SQUARE GARDEN『傍若のカリスマ』でした!」とラジオ風にアナウンスし、メンバーはステージの隣に設けられたブースへ移動。トークパートへと移った。ユニゾンメンバーはノンアルコールビールを片手に、鈴木の号令の下、観客とともに乾杯。3人は「ロックバンドを20年頑張ったことに対して、仲間から労いの言葉をかけられたい」といった想いを語りながら、今日は自分たちも観客とともに、ゲストアーティストのライブを楽しむのだとリラックスして話していた。また、トークパートでは、「傍若のカリスマ」を早々に披露した理由について、「このあとグダグダになっていくだろうから、演奏の難しい曲は先にやろうと思って(笑)」と明かされる場面も。ゲストアーティストのライブを控えたステージでサウンドチェックが進むなか、3人はBGMにノりながら小躍りしていて、ファンが微笑ましくそれを見ている。普段のライブではなかなか生まれ得ない光景だ。
ゲストアーティスト1組目はSHISHAMO。『金沢が極まる』では「ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ」のカバーで観客を驚かせたSHISHAMOだが、この日はいったい何の曲をカバーするのか。そんな期待に応えるようにSHISHAMOは1曲目に「恋する惑星」を、2曲目に2017年の『fun time HOLIDAY 6』でもカバーした「ワールドワイド・スーパーガール」を披露。自身のカラーを巧みに織り交ぜたハーモニーと疾走感溢れるサウンドで観客の心を瞬く間に掴んだ。
SHISHAMOによるユニゾンカバー2連発によって、場内のテンションは一気に引き上げられた。ストイックな演奏に対して、MCでは宮崎朝子が「本日はトリビュートライブということで……とんでもないことだよ! ユニゾンみたいなバンドが一番しちゃいけないこと!(笑)」と笑い、吉川美冴貴が「震えが止まらないよ!」と同調。松岡彩も「知らない人の体みたいになってる」と慣れないフレージングに対する感想を述べる。そんなやりとりのあと、宮崎はユニゾンを「3ピースってやっぱりカッコいいなと思わせてくれるバンド」と評し、「憧れと尊敬の気持ちでいっぱいです。そんなバンドの20周年をこんなステージでお祝いできるのも嬉しいです」と語ったのだった。そしてライブの後半は自身の楽曲で畳みかける。ユニゾンメンバーも「いやー……すっごい!」と唸るほど、痺れるようなライブだった。
なお、SHISHAMOのライブ終了後には、ステージ後方のビジョンにカバーされた楽曲のタイトルが表示される仕掛けも用意されていた。この演出は以降も続き、ビジョンに楽曲タイトルがどんどん追加されていく仕組み。そんな視覚的な工夫もありつつ、続いて、フレデリックが登場した。彼らは代表曲「オドループ」からスタート。アウトロで加速するなどのライブアレンジや、赤頭隆児がトークブースに腰を下ろしてソロを奏でるなど自由な振る舞いもありつつ、観客をしっかり盛り上げてから、「次の曲は、俺たちがユニゾンを大好きな理由がめちゃくちゃ詰まっている曲です」と「マイノリティ・リポート(darling, I love you)」のカバーを披露した。少数派の切り捨てや“なかったことにする”態度に首を傾げるスタンスを歌ったこの曲は、人それぞれの個性や歪さを大切にするフレデリックのマインドとも確かに通ずるものがある。コアな選曲と重低音の効いたアンサンブルに、観客は喜んで反応していた。
さらに、鈴木へのリスペクトが滲む高橋武の気合いの入ったカウントから始まった「世界はファンシー」は、三原健司が〈インテックスなどマジチョロい ユニゾンのカバーとかマジチョロい〉と歌詞を変えて歌い、〈My fantastic guitar〉ならぬ〈My fantastic bass〉と紹介された三原康司のソロから、高橋と赤頭のソロにも繋ぐなど、大胆なアレンジが施された。直後のトークパートでは、健司がユニゾンメンバーに「数々のご無礼を……チョロいわけがない」と謝罪するも、鈴木が「だってチョロいんでしょ?」と切り返し、笑いが生まれる場面もあった。
光村龍哉は、アコースティックギターを携えて一人でステージに現れた。光村がボーカル&ギターを務め、2019年に活動終了したNICO Touches the Wallsは、2004年の『TEENS' MUSIC FESTIVAL』関東甲信越大会でユニゾンと同じステージを踏んでいる。ユニゾンと最も付き合いの長いバンドマンである彼が最初に披露したのは、「センチメンタルピリオド」のカバー。ジョン・レノン&オノ・ヨーコ「Happy Xmas (War Is Over) 」とのマッシュアップアレンジで観客をハッとさせた。2曲目は、NICOが2006年に発表した楽曲「image training」。現在ZIONで活動する光村が、この曲を公の場で歌うのはかなり久しぶりだ。ユニゾンと光村の関係性があってこそ実現したことだろう。
ラスト1曲を残して斎藤がステージに呼び込まれた。斎藤は光村とのコラボに臨む理由を「みなさん、拳を握りながらUNISON SQUARE GARDENの曲をカバーしてくれたんだと思うんだけど、それを僕自身ちょっとでも味わいたくて」と表現。そして光村とエド・シーラン「Shape of you」をカバーした。見事なコンビネーションで複雑なメロディを歌い上げた2人は、演奏終了後、ステージ上で固い握手を交わす。その後のトークコーナーでは“同期”同士で思い出話に花を咲かせた。
最後のゲストアーティストのgo!go!vanillasは、「シュガーソングとビターステップ」のカバーを披露。自身の楽曲「エマ」のリフを取り入れたユニークなアレンジで観客を踊らせた。斎藤が好きな楽曲「倫敦」を盛り込んだセットリストで臨んだ彼らは、メンバー全員で「おめでとうございまーす!」と声を合わせてユニゾン20周年を祝福。牧達弥がMCで「呼んでもらってすごく嬉しかったんですが、(ユニゾンから)『僕たちの曲をやってください』と頼まれた時、『本当に出られるんだろうか?』『僕たちにそんな技量があるんだろうか?』と思って……」とプレッシャーを感じていたことを明かすと、観客からは理解を示す温かい笑いが起こった。
長谷川プリティ敬祐が一緒に体を動かそうと促し、柳沢進太郎がコール&レスポンスを煽るなど、ユニゾンのライブでは見ないシーンも多かったバニラズのライブ。ラストには、ジェットセイヤによる声を枯らしながらの全力のカウントから「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」のカバーが披露された。メンバー4人のプレイに、サポートキーボーディスト井上惇志によるアディショナルアレンジが掛け合わさり、楽曲の新たな表情が引き出されている。ライブ終了後のトークパートでは、斎藤がバニラズの魅力について「何やってもgo!go!vanillasになる。メンバーそれぞれが出す音に“自分自身”が滲みまくっていて、その人間力が音楽に宿っている」と熱弁した。
牧とのトークを終えた斎藤、田淵、鈴木は、ステージ後方のビジョンにズラッと並んだ、ゲストアーティストがカバーした7曲のタイトルをしみじみと眺めている。このあと3人は、20周年を締めくくるライブを行う。斎藤が「こんなに準備してないライブは初めて」と呟き、鈴木が「ルーティン崩れまくってる(笑)」と笑うなか、落合が「お三方、準備はよろしいですか?」と尋ねると、代表して斎藤が「大丈夫ではないです(笑)」と返答。そして彼らは「大丈夫ではないかもしれないですけど、いきましょう! Final artist is UNISON SQUARE GARDEN!」という落合の滑らかなアナウンスに背中を押されながら、SE「絵の具」をバックにステージへ向かった。鈴木がコートを脱ぐと、彼がこの1年ライブで着続けていた、背面に20thロゴが入ったジャケットが現れる。粋な演出に観客が歓声を上げるなか、田淵は笑顔で定位置につき、斎藤はいつも通り片手を上げて、ライブの始まりを合図した。
ステージを包む静謐な空気、「本家!」と告げた斎藤の鋭い発声から、3人は既にライブモードに切り替わっているのだと伝わってくる。そして背後のビジョンに表示されていた7曲のタイトルは、「恋する惑星」のみに切り替わった。そう、彼らが1曲目に選んだのは、数時間前にSHISHAMOも披露した「恋する惑星」。明るくオープンな楽曲をエネルギッシュに届け、仲間と一緒に20周年のゴールテープを切るこのライブの幸福感を体現した。続いては「ワールドワイド・スーパーガール」。SHISHAMOによってカバーされた楽曲の演奏が続く。こちらもみずみずしいサウンドだ。
さらに、先ほどバニラズによってカバーされた「シュガーソングとビターステップ」、フレデリックによってカバーされた「マイノリティ・リポート(darling, I love you)」が連続で披露される。おそらくこの頃にはみんな気づいていたはず。このライブ、「様々なアーティストがユニゾンの楽曲をカバーする」だけではなく、「ユニゾンが直後に本家を披露する」とんでもないライブなのだと。いわば、『Thank you, ROCK BANDS! 〜UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album〜』のトリビュート盤(Disc1)と聴き比べ盤(Disc2)がリアルタイムで展開されている感じだ。
自分たちが慕い敬愛するアーティストによる本気のカバーを受けて、ユニゾンは同志への感謝、温かい気持ちを胸に抱きながらも、自分たちも負けていられないのだと意欲に燃えている。とめどなく溢れ出るエネルギーを抑える必要などないと言わんばかりに、全て楽曲に注ぎ込んでいる。“ライブ化け”という1単語ではとても言い表せないほど、楽曲が、バンドが、大胆に化けていく瞬間の連鎖。そんななか、「世界はファンシー」ではフレデリック健司のアレンジを受けて、斎藤が〈20周年とかマジチョロい〉と歌詞を変えて歌った。そして間奏では〈My fantastic guitar!〉=ギターソロも炸裂。その場で立ち上がりながらドラムを叩きまくる鈴木も、駆け回ったり床に倒れ込んだりしながらもフレーズを絶やさない田淵も全身全霊だ。




「さわれない歌」と同様、「シャンデリア・ワルツ」もバンドとリスナーにとって特別な意味を持つ曲であり、大切な曲を連続で演奏する20周年のエンディングにふさわしい展開が、ユニゾンを愛する一人ひとりの胸を強く打つ。そして「20周年、本当にありがとうございました。ラスト!」と、ラストナンバー「フルカラープログラム」が披露された。虹色の光の下で響く豊かなサウンドは20周年の集大成そのものだが、汗を光らせながら演奏するメンバーは、今この瞬間にもK点を越えようとしている。斎藤がスタンドマイクを反らし、アカペラで届けたラスサビを経て解き放たれる〈完全無欠のロックンロール〉。彼らが最後に歌ったのは〈どうか忘れないでよ〉というフレーズだったが、今年ほど年忘れをしたくない年はない。きっと全部忘れないぞと誰しもが思っていたはずだ。

ロックバンドの生き様を、人生のロマンを、UNISON SQUARE GARDENは20年かけて私たちに見せてくれた。これからも3人の信じる音楽をもっと聴かせてほしい。